PMI(M&A成立後の統合プロセス)とは?PMIの進め方や注意点
2021.11.113 years前
「PMI」とは、M&A後に組織を統合していくプロセスを指します。企業風土が異なる組織が一体となっただけで、経営状態がよくなるわけではありません。PMIは、M&Aのシナジー効果に大きな差が生まれる、非常に大切な作業です。本記事では、PMIの進め方や注意点について解説します。
PMI(M&A成立後の統合プロセス)とは?
PMIは、「Post Merger Integration」の略した用語で、M&Aが行われたあとの統合プロセスのことです。M&Aでは買収や合併の作業や手続きには注意を払いますが、その成否はPMIにかかっていると言っても過言ではありません。
なぜPMIが重要なのか?
では、なぜPMIが重要なのでしょうか?
M&Aが行われると、組織の風土に少なからず変化が生じます。企業文化が異なる複数の会社が一体となることで、これまでのようにスムーズに業務を進められなくなったり、対立やモチベーションの低下につながったりするリスクもあります。
本来は、M&Aによって「1+1」を3にも4にもするシナジー効果を期待していたはずです。しかし、組織の統合がうまくいかなければ、「1+1」が2にしかならない、最悪の場合は2より小さくなってしまいかねません。
このシナジー効果を最大限発揮できるようにするために必要なのがPMIなのです。
M&Aをしても、従業員が自然と新しい組織のやり方に変わってくれるわけではありません。変わるとしても、非常に長い時間がかかってしまいます。PMIを通じて、短期間で組織をまとめ上げ、少しでも早くM&Aのシナジー効果を生み出すことに意義があります。
PMIの進め方
PMIは次のようなステップで進めます。
1.統合方針を定め、プロジェクトチームを作る
はじめに、経営陣が統合にあたっての基本方針を出しましょう。経営理念やビジョンまで明確に考えなければなりません。はっきりした方針がなければ、従業員はどうすればよいのかがわからず、現場が混乱するのは明白です。
そのうえで、統合方針を浸透・推進するためのプロジェクトチームを作りましょう。
2.新体制に変えるにあたっての課題・問題をリストアップする
プロジェクトチームで、新体制に移行した場合の課題や問題点を幅広くリストアップします。統合後の経営方針をベースに、制度や業務内容だけでなく、従業員の意識面まで踏み込んで検討することが大切です。
3.どのような対策をして統合していくのかを具体化する
課題・問題点を解決するための方法を検討し、具体的なプラン内容まで落とし込みます。
4.統合計画を作成し、規定・マニュアル等の改定も進める
統合後の事業計画をまとめ、シナジー効果が発揮できるよう、社内規定やマニュアルの整備を進めます。人事制度・管理会計制度や組織構成の変更などから、製品・サービスの統廃合や取引相手の変更なども検討しておく必要があります。
5.統合計画を実行に移す
M&Aが成立し統合された瞬間から、統合後の事業計画に基づいて、統合を進めます。
PMIを進めるうえでの注意点
PMIを進める上での注意点として、次の4点が挙げられます。
1.PMIの作業は、買収前から始める
PMIは、統合したその日から始めなければなりません。そのため、M&Aの基本合意ができてデューデリジェンスを進めている間から準備を始めましょう。
統合プランを作成するために議論することがM&Aを本当に進めるべきかの材料になりますし、デューデリジェンスでわかった内容を反映させれば、よりよい統合プランに仕上げることにもつながります。
2.短期的な統合計画を必ず作る
統合後の事業計画を作る際は、中長期的なものだけでなく、短期的なものも作成しましょう。
政治の世界で新政権が高い支持率を得られる傾向にある100日間(ハネムーン期間)や、転職後3か月以内の成果が大切だと言われていることなど、物事は「最初が肝心」です。短期間で組織を固め、中長期的な業績目標を達成するための基礎を作りましょう。
3.強いリーダーシップをもって進める
M&Aでは、異なる文化の組織が統合するため、さまざまな反発やトラブルが起きるものです。それを解決するのがプロジェクトチームの役割ですが、チームの活動を支えるのが「強いリーダーシップ」です。経営陣が強く明確な方針を出すことで、全従業員に方針が伝わり、組織の統合がよりスムーズになります。
4.現場とのコミュニケーションをおろそかにしない
しかし、強いリーダーシップだけで強引に推し進めることは、現場を無視しているようにも感じられかねません。プロジェクトチームが現場のリアルな声を聴き、コミュニケーションを密に取ることで、統合への理解を進め、方針の微調整も可能となります。
おわりに
PMIはM&A成立後に行う、とても重要な統合プロセスです。M&Aによるシナジー効果を最大化するために欠かせない作業で、この成否で将来性が大きく変わります。だからこそ、M&Aの交渉を進める一方でPMIの準備を進め、統合直後から実行できる体制を整えましょう。
短期的・中長期的両面から計画を立て、強いリーダーシップで推進させることで、経営陣も従業員も「M&Aしてよかった」と思える環境を作りたいものです。
この記事を書いた人
シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎
ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。