M&Aにかかる手数料の種類、仲介手数料の比較ポイント

M&A仲介

2021.10.213 years前

M&Aにかかる手数料の種類、仲介手数料の比較ポイント

M&Aの仲介手数料と言えば「成功報酬」が一番に頭に浮かぶのではないでしょうか。しかし、業界で決まった手数料体系があるわけではなく、成功報酬以外にも着手金や月額報酬などがかかる業者もあります。

M&Aの仲介手数料は高額ですが、ただ安ければよいわけではありません。そこで今回は、仲介手数料を比較するときに知っておきたいポイントをお伝えします。

M&A仲介にかかる手数料の種類

M&Aの仲介にかかる手数料にはいろいろなものがあります。M&Aは、モノやサービスの売買とは異なり、支援業務が長期間にわたり、かかるコストも大きいため、いろいろな形で手数料がかかってきます。

近年は、小規模のM&Aを中心に、低コストの仲介手数料を打ち出す業者も増えていますが、ただ安ければいいというものではありませんので、基本的な手数料の種類や内容については理解しておくのがよいでしょう。

一般的に挙げられる手数料の種類は次の通りです。

1.相談料
M&A仲介の契約をする前の相談にかかる費用です。相談料を無料にしている仲介会社が多いですが、有料としているところもあります。

2.着手金
M&A仲介業者と契約を結ぶときに着手金が発生します。50万円~100万円程度で設定されていることが多く、なかには数百万円の着手金が必要な業者もあります。最近は、着手金を無料とする業者も出てきました。

M&Aを進めるためには、相手候補を探す作業や買い手に条件提示するための企業価値評価など、さまざまな準備が必要です。その準備段階にかかるコストとして着手金が設けられています。

実際に、取引相手との交渉段階に至らなかった場合でも、返金されることはありません。しかし、M&Aが成約した場合には、成功報酬の内金として差し引かれることが多いようです。

3.中間報酬・中間金
M&Aが基本合意契約まで進んだ場合に、中間報酬が発生する場合があります。その時点で推定される成功報酬の10~20%程度が一般的です。最終契約まで進まなかった場合でも返金されませんが、最終契約時には成功報酬の内金とされます。

4.成功報酬
M&Aの最終契約が締結された場合に支払う手数料です。詳しくは次の項目で説明します。

5.月額報酬(リテイナーフィー)
契約期間中、仲介会社に毎月支払う報酬です。数十万円程度のこともありますが、希望するM&Aの規模や内容によっては100万円を超える場合もあります。M&Aの交渉がまとまるまで必要なコストであるため、交渉が長期化すると負担が大きくなってしまいます。月額報酬を無料としている仲介会社もたくさんあります。

6.デューデリジェンス費用
デューデリジェンスの作業を行う会計士等の専門家に支払う報酬です。調査対象企業の規模などによって変わりますが、数十万円程度ですむこともあれば、数百万円必要となることもあるでしょう。

M&Aにおける成功報酬

M&Aにかかる手数料の中で最も大きな割合を占めるのが成功報酬です。手数料の大半が成功報酬になるのが一般的ですが、その名の通りM&Aが成立しなかった場合には請求されません。

小規模なM&Aやマッチングサイトを利用してのM&Aでは、金額や料率が一定の固定報酬制を採っているところもあります。

しかし、一般的には、取引金額に「段階的に低下する料率」をかけて金額を求める「レーマン方式」が採用されています。レーマン方式では、大規模な取引になるほど、取引金額に対する成功報酬の割合が小さくなります。

詳しくは、レーマン方式のメリットやデメリットについてまとめたこちらの記事をご覧ください。

M&A仲介手数料の比較ポイント

M&Aにかかる手数料は高額になるため、契約を結ぶ前にしっかりと比較しておきたいところです。

1.いつどのような手数料がかかるのか
M&Aにかかる手数料は、仲介業者によって異なります。成功報酬だけの業者もあれば、着手金や中間報酬が発生する業者もあります。
金額の大小はもちろんですが、どのようなタイミングで費用が発生するのか、返金があるかどうかなども確認しましょう。また、手数料体系が明確になっているかもポイントです。いざM&Aの交渉を始めたところ、あとになってから追加コストに気づいたということはないように気をつけましょう。

2.成果報酬以外のコストがかからないのがよいとは限らない
着手金や中間報酬など、成功報酬以外の費用は、M&Aが成立しなかった場合でも返金されません。そのため、「成果報酬だけの仲介業者がよい」と考えてしまいがちです。しかし、必ずしもそうとは言い切れません。着手金や月額報酬を支払った場合、M&A仲介業者には支払われた分だけの仕事をする義務があります。

もちろん、M&Aの成立を保証することはできませんが、相手候補探しなどの取組みをしなければなりません。これらの費用を請求するということは、受けた依頼をすばやく積極的に取り組むという姿勢と受け取ることができますし、仲介業者の担当者を急かしやすいとも言えるでしょう。

逆に、成果報酬だけの場合は、M&A成立の見込みが低い案件は放置されやすくなってしまうかもしれません。

金額だけでなくサービス内容や品質に注目して比較することが大切

もう1つ大切なのが、「サービス内容や品質」です。金額以外のことも見て、仲介業者を選ぶようにしましょう。

M&Aを検討するとき、最も重視しなければならないことは、仲介手数料を抑えることではないはずです。自社にとってよりよいM&Aを実現し、企業価値を高めたりさらなる成長をしたりすることが、最優先事項なのではないでしょうか。

金額が違っても、その費用でどこまでのサービスを提供してくれるのかが異なるかもしれません。一見するとコストが低い業者でも、よりよいM&Aのために必要なことをしようとすると、追加コストで逆に割高になるかもしれません。

また、自社のことを親身になって考えてくれる仲介業者選びも大切です。これは、自社にとってよりよい相手とのM&Aが成立できるように支援するという意味で、M&A仲介業者の「品質」と言ってもよいでしょう。

例えば、着手金などで100万円支払ったとしても、すべきでないM&Aを止めてくれたり、将来的に大きなリターンを生むよりよい相手を見つけ出してくれたりするのであれば、費用が高くなったとしても自社のためにはポジティブな出費になります。

金額だけではなく、総合的に自社にとってメリットの大きい仲介業者かどうかを比較するようにしましょう。

おわりに

M&A時に必要な仲介手数料は、決して安いものではありません。だからこそ、しっかりとした比較が必要です。業者によって手数料のかかり方も違うため、どのような手数料があるのかを一通り知っておきましょう。

ただ、高額な手数料だからと言って、安くすることだけを意識していると、よりよいM&Aが実現できなくなってしまうかもしれません。
成功報酬以外の費用が発生したりしたとしても、サービス内容まで含めて、本当に信頼できるM&A仲介業者を探すことがポイントです。

この記事を書いた人

シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎

ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。

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