オーガニックグロースとM&Aグロースの違い、各メリット・デメリットを比較
2022.1.73 years前
企業の成長方法は、大きく2つに分類できます。社内の資源を使う「オーガニックグロース」とM&Aで社外の資源を手に入れる「M&Aグロース」です。社内資源を使った自力でのものだけを成長と考えがちですが、M&Aで一気に組織を大きくすることもまた成長です。
本記事では、オーガニックグロースとM&Aグロースの違い、メリット・デメリットについて解説します。
目次
オーガニックグロースとは
オーガニックグロースは、自社内のリソースを活用して成長する方法です。ここで言うリソースは、販売している商品・サービスや、貸借対照表に掲載されている資金や固定資産だけではなく、人材・技術などの無形の資産も含めます。
M&Aグロースとは
一方のM&Aグロースは、その名の通り、企業の買収や他社との合併によって、他社のリソースを取り込んで成長する方法です。オーガニックグロースの反対の方法であるため「ノンオーガニックグロース」とも呼ばれます。
オーガニックグロースとM&Aグロースの違い
オーガニックグロースとM&Aグロースには、次のような傾向があると言えます。
オーガニックグロース | M&Aグロース | |
成長源泉 | 内部リソース | 外部リソース |
必要資金 | 少ない
(自己資金中心) |
多い
(不足分は増資・借入) |
社内の変化 | 小さい | 大きい |
成長スピード | ゆっくり | 速い |
経営視点 | 中長期視点になりやすい | 短期的視点になりやすい |
あくまで、一般論的な傾向であり、具体的にどのような戦略を採るかで違いはあります。また、企業が採る成長戦略は1つだけではないため、「オーガニックグロースだけ」「M&Aグロースだけ」とは限らず、「オーガニックグロースを柱としながらも、必要に応じてM&Aも活用する」などと、両者をミックスしながら成長を目指します。
オーガニックグロースのメリット・デメリット
オーガニックグロースのメリット・デメリットには次のようなものが挙げられます。
【メリット】
1.リスクが低い
オーガニックグロースの場合は、社内リソースの範囲内で比較的少額の投資で取り組むことが多く、その分だけリスクが低いと言えます。
2.社内の雰囲気を変えずに成長できる
外部からリソースを取り込むのではないため、既存の従業員を活用しての成長するのが基本です。社内の雰囲気やよいところをそのまま活かして成長につなげることができます。
【デメリット】
1.成長に時間がかかる
少しずつ成長していくため、どうしても時間がかかってしまいます。
2.資金や人手が不足しやすい
普通に考えれば、社内で人手が余っている状態を放置し続けることはないでしょう。そのため、成長のために社内のリソースを使う場合は、人手が足りなくなりがちです。また、充分な投資余力がなければ、資金を借り入れで調達する必要があります。
3.大きな変化・すばやい変化が困難
社内の雰囲気が変わらない反面、大きな技術革新や社会情勢の急変など、大きくすばやい変化が求められる場合には、オーガニックグロースでは成長スピードが追い付かず、競合他社に差をつけられるかもしれません。
このように、オーガニックグロースは堅実な成長が望める方法ですが、一気に店舗を増やすなどといった大きな投資を伴う場合は、リスクが高くなります。また、市場環境が変わりやすい業界やベンチャー企業は、オーガニックグロースであっても超高速での成長が求められます。
M&Aグロースのメリット・デメリット
M&Aグロースのメリット・デメリットには次のようなものが挙げられます。
【メリット】
1.成長スピードが速い
他社のリソースをそのまま取り込み、その分だけ一気に成長することができます。
2.組織変革がしやすい
外部から人材やノウハウを導入するため、オーガニックグロースよりも組織変革しやすいと言えます。新規事業への参入も、そのノウハウを持つ会社・事業を買収することで、一気に進められます。
【デメリット】
1.多大な投資が必要
M&Aは、既存の会社・事業を買収するため、多額の投資が必要です。自己資金だけで足りないのであれば、借り入れや増資によって資金調達しなければなりません。そして、将来の返済や企業価値向上が求められる分だけ、短期的視点で収益を上げることにとらわれてしまうリスクもあります。
2.失敗したときのダメージが大きい
投資額が大きいことや、異なる風土の組織を一体化することなど、社内に大きな変化を与えます。変化が大きい分だけ、失敗した場合のダメージも大きくなります。
M&Aグロースは、大きな成長が望めます。自社のリソースでじっくり成長する時間を省くことができるため、「(成長のための)時間を買う」ともたとえられます。
しかし、大きなリターンにはそれに応じたリスクがつきものです。資金力が豊富であることや、既存事業の成長性や収益力が高いなど、そのリスクに耐えうる力が必要な方法であるとも言えます。
M&Aは専門家に相談を
オーガニックグロースとM&Aグロースにはそれぞれにメリット・デメリットがあり、「絶対にこちらがいい」という答えはありません。オーガニックグロースで堅実に成長してきた企業であっても、新市場開拓や海外進出など、M&Aグロースの方が適しているケースもあるのです。
ただ、M&Aはオーガニックグロースよりもリスクの高い成長方法です。一度の失敗が大きなダメージを与えることもあるため、慎重に検討しなければなりません。専門的な知識を活用し、客観的で冷静な意見を聞くためにも、M&Aに詳しい専門家に相談することをおすすめします。
おわりに
オーガニックグロースは「社内リソースを使った成長」で、M&Aグロースは「外部のリソースを手に入れる成長」です。一言でまとめるならば、「じっくり堅実な成長」と「リスクを取った急成長」と言えるでしょう。
一般的には、オーガニックグロースで成長するのが基本ですが、成長フェーズや市場環境によっては、M&Aグロースを取り入れた方がいい場合もあります。専門家の意見を聞くなどしながら、自社に最適な成長戦略を立てましょう。
この記事を書いた人
シニア・プライベートバンカー、MBA(経営学修士)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本証券アナリスト協会認定アナリスト横山 研太郎
ねこのて合同会社 代表。大手メーカーで経理、中小企業の役員として勤務したのち、ファイナンシャルプランナーとして独立。金融機関での経歴がないからこそできる、お客様にとってのメリットを最大化するプランを提案している。オーナー企業での役員経験を活かし、経営コンサルティングからオーナー様の資産管理・資産形成まで、幅広い相談に対応できることを強みとする。